※この記事は昨年12月下旬、売場の繁忙期に書き始めたものです。
「仕事が遅い。」
「もっと効率よくできないの?」
「残業すればいい、と思ってみんな日中ゆっくり仕事しているんでしょ?」
「お前人がやれっていったとやってないで、人の話聞いてんのか。なめてんのか。」
また今日も聞こえる。
売場にたまにしか出てこないあなたたちが、何を知ってそんな言葉を吐けるのかと思う。
全国の小売業の現場でも同じことが起きているのではないか。
つまり、
働き方改革という旗のもと、業務量やそれをこなす方法、人員量が全く改善されていないのにもかかわらず、
残業時間が上限とそれを超えたときに発生するペナルティーだけが新しく設定され、
そのペナルティーを受ける、普段現場にいない中間管理職が「生産性を上げろ」と現場のリーダーを詰める、ということが。
その「生産性を上げる」という言葉に具体性が含まれていることは稀だ。
含まれていたとしても、たいていは「早く手を動かせ」という昭和的、非文化的なものにすぎない。
生産性を式の中だけで考えてはいけない
生産性という指標には大きく分けて2種類あって、
①資本生産性
投入した資本量(設備や土地等)に対して、どれくらいの付加価値を生み出したか。
投入した労働量に対して、どれくらいの付加価値を生み出したか。
企業の生産性を上げるためには、どちらの指標も重要であるが、
販売の現場に降りかかる言葉の「生産性」は②の「労働生産性」である。
ここでは単純化して、計算式に表すと、
労働生産性=付加価値(粗利)/労働投入量(人件費)
さらに細かく分解すると、
付加価値=売上-売上原価
(商品をメーカーから800円で仕入れて、1,000円で販売した場合、付加価値は200円。)
労働投入量=時給×労働時間
これは大企業で起こりがちなことだと思うのだが、
資本投入の決済権者はまず、営業部門にはいない。
それでも、現場の意見を吸い上げてすぐに動く機能があればいいのだが、
僕の会社でそんな都合のいいことはない。
営業(販売)部門にいる中間管理職は資本生産性を向上させることはできない。
できることは、労働生産性を上げることだけである。
つまり、
①売上を上げる。
②売上原価を下げる。
③労働時間を減らす。
④時給を下げる。(異動や担当替えによって人件費のかからないパートや若手を使う。)
以上の4つしかない。
しかし、商品の単価が低く、回転率を上げて売上を作っている店・売場(例えばデパ地下)は、
現場の営業時間中になんとかできることはほとんどやってしまっていて、すでに改善の余地が少ないことが多い。
本当は仕組みやオペレーションの方法を、根本的に変えていきたいのだが、
そのためのミーティングをする時間は当然なく、また、その時間を作ることが許される雰囲気もない。
ミーティングやそこで決まった施策を実行するための時間を作るために、
まずは人員を増やす。それができないなら営業時間後の残業を許す。
残業時間を減らすために残業代を投資してほしい。
オワコン大企業が自慢できるのは、資本金(=企業の体力)くらいなのだから。