今回は、2019年1月15日に発売された、
「FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」
を要約していこうと思います。
1.書評
この本は、元医師でグローバルヘルスの教授であった著者が、
社会の知識不足(間違った思い込み)の原因が人間の本能によるもの
ではないかと考え、それを理解した上で世界を正しく見る方法を説いているものです。
ビル·ゲイツが絶賛し、アメリカの大学の卒業生にプレゼントしたということなどで話題になりました。
2019年上半期に、もっとも注目された本といってもいいのではないでしょうか。
本の冒頭では、ネット上ですでによく取り上げられている、いわゆるチンパンジークイズが出題され、ぼくも自分の知識不足に気づかされ愕然としました。
例えば、こんな問題。
「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?」
A 20%
B 50%
C 80%
「世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?」
A 20%
B 50%
C 80%
高学歴や知識人ほど正答率が低く、あてずっぽうのチンパンジーの正答率(33.3%)より
悪いという結果になったそうです。
400ページほどありますが、写真やグラフとともに面白い具体例を多用しており、とても理解しやすく
サクサク読み進められました。
子供から大人まで、ビジネスパーソンでもそうでなくてもすべての人におすすめです。
2.「10の思い込み」のポイント
⓪イントロダクション
社会全体に知識不足が広がっている。
なぜか?アップデートの問題ではない。
→「ドラマチックな本能」と「ドラマチックすぎる世界の見方」が原因。
原始時代は、この2つが生き残るために必要だった。
例えば、
·差し迫った危険から逃れるために一瞬で判断を下す本能
·唯一有効な情報源だった噂話やドラマチックな物語に耳を傾ける本能
·食糧不足のときに命綱となる砂糖や脂質を欲する本能
①分断本能
→様々な物事や人々を2つのグループに分け、
その間には大きな溝があるはずだと思い込む本能。
(例)発展途上国と先進国の人々
<対策>
4つのレベルで考える。大半の人はどこにいるのか理解する。
②ネガティブ本能
→物事のポジティブ面より、ネガティブ面に気づきやすいという本能。
<対策>
·良い出来事(ゆっくりとした進歩)はニュースになりにくく、悪い出来事はニュースになりやすいと理解する。
·「悪い」と「良くなっている」は両立すると理解する。
③直線本能
→グラフが直線を描くと思い込んでしまう本能。
(例)「世界の人口はひたすら増え続ける」という勘違い
<対策>
グラフの形にはたくさんの種類があるのを知っておく。
④恐怖本能
→危険でないことを恐ろしいと考えてしまうという本能。
<対策>
「恐ろしいものには自然と目がいく」ことに気づくこと。
リスクは「危険度」と「頻度」の掛け算で決まり、
「恐怖」と「危険」はまったく違うと理解すること。
⑤過大視本能
→数字をひとつだけ見て、とても重要であるかのように勘違いしてしまう本能。
<対策>
他の数字と比較したり、割り算(量のデータを割合に直す)したりする。
⑥パターン化本能
→ひとつの例がすべてに当てはまると思い込んでしまう本能。
<対策>
分類を疑い、より適切な分類を見つける。
⑦宿命本能
→持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まると思い込んでしまう本能。
<対策>
ゆっくりとした進歩でも変わっていると意識する。
1年で+1%でも、70年で倍増。
⑧ 単純化本能
→世の中のさまざまな問題にひとつの原因とひとつの解答を当てはめてしまう本能。
<対策>
ひとつの視点だけでは世界を理解できないと知る。
なんでもトンカチ(自分が持っている得意な考え方)で叩くのではなく、
工具箱(さまざまな切り口、考え方)を準備する。
⑨犯人捜し本能
→なにか悪いことがおきたとき、単純明快な理由を見つけたくなる本能。
<対策>
「犯人」ではなく、「原因」 を探す。
その状況を生み出した絡み合っている複数の原因やシステムを理解する。
⑩焦り本能
→恐怖に支配され、時間に追われて愚かな判断をしてしまう本能。
<対策>
冷静になり、情報を手に入れる。
データにこだわる。
実際の本には、わかりやすい具体例が盛り込まれていて、
大学受験で政治経済を使っていたぼくにとってごちそうのような本でした(笑)
2019年のぼくのおすすめ本ベスト5に入りそうです。